APDSでは悪性疾患など生命を脅かす合併症を発症するリスクがあるため、早期の診断と治療が必要不可欠です。
APDSは多種多様な臨床症状を呈します1,2。
APDSの初期症状として最もよくみられるのは反復性気道感染症であり、APDS患者のおよそ65%で認められます。それに続く代表的な所見は臓器腫大(約16%)およびその他の感染症(約11%)です3。呼吸器感染症は多くの場合乳児期または小児期に発症し、その後気管支拡張症や自己免疫異常が発症することがあります3,4。
リンパ増殖はAPDSの代表的な臨床所見であり、1歳から6歳の患者の70.4%で報告されています。よくみられる身体所見としてはリンパ節腫脹(約58%)、脾腫(約44%)、肝腫大(約24%)が挙げられます。その他、良性リンパ増殖症としては、消化管および呼吸器系の反応性過形成およびリンパ節炎(約25%)、扁桃肥大(約9%)が報告されています。
APDS1における肝腫大の発現率はAPDS2の約3倍である一方で、リンパ節腫はAPDS2で多くみられます。また、反応性過形成はAPDS1で、扁桃肥大はAPDS2で多くみられます3。
リンパ腫は重大な合併症のひとつで、しばしば10代後半から成人期前半にかけて発症し、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)が主です。1 リンパ系悪性腫瘍の累積リスクは非常に高く、40歳で78%と推定されています2。
APDSはごく最近(2013年)認知された疾患であり、APDSと診断された成人の大半は、小児期に繰り返し感染症に罹患していたものの、追加検査が必要である程度の重症とは認識されずに過ごしてきました。成人の場合、ヨーロッパではリンパ腫に至るリンパ増殖症状のため血液内科に紹介されるケースが主流ですが、日本では血液内科に加え免疫・感染症科に紹介されることもあります5,6。
APDSの症状は多種多様であり、同じ遺伝子変異を持つ家族間であっても異なる症状を示すことがあります。無症状のAPDS患者が存在する一方で、重症かつ反復性の副鼻腔・肺感染症、持続する重症または反復性のヘルペスウイルス感染症(中でもエプスタイン・バーウイルス[EBV] およびサイトメガロウイルス[CMV] 感染症)、リンパ節腫脹、肝腫大、脾腫、結節性リンパ過形成、自己免疫性血球減少症や自己炎症性疾患、腸疾患、リンパ腫などを合併する患者もいます。
APDSは末端臓器障害や早期死亡につながる可能性がある進行性の疾患です。臨床症状は乳児期に重症の反復性副鼻腔・肺感染症として現れ、リンパ増殖性疾患や自己免疫疾患は小児期の後半に多くみられます。
MAS(マクロファージ活性化症候群)
APDS患者は以下の合併症のうち2つ以上を呈することが多い:
反復性の副鼻腔・肺感染症はしばしば重症で、上気道感染症、中耳炎(永続的な難聴に進行することがある)、副鼻腔炎、肺炎、気管支炎を含みます。これらの感染症はAPDSの初期症状であることがほとんどで、早い場合には乳児期に発症すると報告されています。しかし、これらはすべてPID全般に特徴的な症状でもあるため、これだけでAPDSの診断を確定することはできません。
リンパ節腫脹、脾腫、肝腫を含むリンパ増殖はAPDS患者の71~89%にみられると報告されており、中でも患者の16%が初期症状として臓器腫大を呈します。リンパ増殖は悪性腫瘍に進行する可能性があるため、持続性または難治性のリンパ増殖がみとめられる場合にはリンパ腫の評価をする必要があります。呼吸器および消化管では、リンパ増殖は粘膜結節性リンパ過形成としてAPDS患者の24~36%に現れると報告されています。消化管の結節性リンパ過形成は、およそ25%のAPDS患者において腸疾患との関連が報告されています。リンパ節腫脹と脾腫を伴うリンパ増殖は3歳頃から始まることが示唆されています2-5。
感染症による肺障害がリンパ節腫脹や結節性粘膜過形成と相まって気管支拡張症に発展し、不可逆的な末端臓器障害をきたすことがあります。11~13歳頃に発症すると報告されています2-6。
APDS患者はしばしば、5歳前後で慢性下痢、吸収不良、大腸炎を呈します。腸疾患は消化管の結節性粘膜過形成や発育不全を伴うことがあります2,4,5。
急性および慢性のウイルス感染症やウイルス再活性化がみられます。中でもエプスタイン・バーウイルス(EBV)とサイトメガロウイルス(CMV)が多く、慢性ウイルス血症および播種性感染を含むEBVおよびCMV感染症は最も重篤で、それぞれ患者の24~30%および15~17%で発症すると報告されています。慢性EBV感染症はAPDS患者においてリンパ腫を引き起こすこともあります。また、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症および水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)感染症がみられることもあります2-5,7。
APDSにおける自己免疫性疾患では血球減少症が最も多くみられますが、自己免疫性甲状腺症、関節炎、糸球体腎炎、肝硬変、硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、糖尿病、湿疹などの自己免疫疾患や自己炎症性疾患も報告されています。自己免疫症状は10歳6ヶ月頃に発症すると報告されています2-5。
APDS患者における血球減少症では、複数の血球系列が影響を受けており、貧血、血小板減少症、白血球減少症などを惹起します。これらの合併症はAPDS2患者よりもAPDS1患者で高頻度に発症すると報告されています2-5。
APDS2患者では特に、身長と体重の増加が著しく障害されることがあります。これは腸疾患と関連している可能性が示唆されています2,3,5。
リンパ腫はAPDS患者において最もよくみられる悪性疾患であり、古典的なホジキンリンパ腫だけでなく、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫や辺縁帯B細胞リンパ腫などの非ホジキンリンパ腫も含まれます。リンパ腫のリスクは、ウイルス感染、特にEBV感染歴があると上昇することが示唆されています。発症年齢中央値は18~23歳で、APDS患者の21%で最初のリンパ腫が診断されたと報告されています。リンパ腫は早期死亡につながる可能性があり、APDS患者の死亡要因の62%を占めます。また、リンパ腫より頻度は低いものの、白血病や固形悪性腫瘍などの他の悪性疾患を呈することもあります。APDS2患者における40歳時の悪性腫瘍の累積リスクは78%です2-5,7。
APDS患者でみられる神経発達遅滞および神経精神障害には、全体的な発達遅滞、言語遅滞、軽度認知障害、学習障害、自閉症、アスペルガー症候群、不安症、うつ病、行動障害などがあります2-5,8。神経発達遅滞はAPDS1患者の10~19%、APDS2患者の27~31%で報告されています3-5,8。
APDSは患者のQOLに大きな負担を与えます。1-3 中でも気管支拡張症に至る頻回の副鼻腔や肺の感染症は患者の予後やQOLに長期的な影響を及ぼします4-6。
患者の負担になる要因はAPDSの症状だけではありません。APDSの治療では多くの場合入院や外科的介入が必要になるほか、多種多様な症状を管理するために多数の薬剤を服用すること、診断と治療の過程で複数の医師の診察を受けることが多く、これらの要因によって、通学や通勤、社会活動に支障をきたし、ストレス、不安、うつ症状などをきたすことがあります1,7-9。 また、APDSを含むPIDの患者は倦怠感を訴えることが多く、患者のQOLに悪影響を与えます7-10。
APDSは患者に心理的な負担ももたらします。成人PID患者と、年齢をマッチさせた対照者、合計293名を対象とした研究では、4-DSQ(4-Dimensional Symptom Questionnaire)を用いて疾患の心理的影響が評価されました。4-DSQは、苦痛、抑うつ、不安、身体症状の発現の4つの側面(ディメンション)から、50のサブ項目にわたって調査する自己申告式の質問調査です。各ディメンションで中等度または高度と回答した患者の割合は対照群と比較してPID群で有意に高く、PID群では苦痛が33.9%、抑うつが18.9%、不安が22.4%、身体症状の発現が36.2%であったのに対し、対照群では苦痛が16.3%、抑うつが5.7%、不安が8.0%、身体症状の発現が11.2%でした。このことから、PID患者は、感染症への恐怖、社会的孤立、病気への不適応、将来への病気の影響への懸念など、いくつかの精神衛生上の困難に関するリスクが高いことがわかります11。
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